妻の笑顔が見たいから
7月23日(火)
最近、ずっと夢だったマイホームを真剣に考えるようになり、
土地や戸建て、マンションをよく内覧しているのだが、沖縄はどこもかしこも値段が高騰しすぎて、ぐうの音もでない。というか出せない。
最初はワクワクしながら見てまわったていたのに、
今では、がっくりと肩を落とすように…。
今、家を持っている人たちがすごい人たちに見える。
大金持ちではないか。
妻のこだわりが強いので、おそらく建てるなら注文住宅になるだろう。
沖縄で注文住宅を建てるとすると…だめだ、考えただけでめまいがしてきた。
土地にもよるが、6000万円では建たないだろう。
「もう疲れた…。どこも高すぎる。沖縄で探すのやめたい」
とうとう妻が弱音を吐いた。
あんなに楽しみにしていた沖縄ライフを手放したいと言うのだ。
結婚する前に、どこに拠点を置いて生活するかの話になった時に、
僕は妻が住みたいところに住めばいいと伝えていた。
それは今も変わっていない。
僕は妻と一緒に暮らせればいいのだ。
「鹿児島に理想の家を建てよう」
妻の実家がある鹿児島県。
沖縄に比べて比較的、いや、めちゃくちゃ土地が安く売っているのをネットで見て知っていた。
そこには大きなショッピングモールはないし、妻の好きな本屋は一件くらいしか近くにない。毎週のように通っている無印だって1時間、車を走らせないとない。
今とは快適さがずいぶん変わってしまうけれど、妻はそれでもいいと言った。
「あんたが先に天に召されたら、私は沖縄で独り生活できないと思う」
妻は笑いながら、寂しそうに言ったことがあった。
自分の慣れ親しんだ故郷じゃない場所で生活してみて、
どこか疎外感を感じているのかも知れない。
「かといって、あんたも知らない土地に家を建てて、私が先にいなくなったら寂しいか。そしたらあんたは沖縄に帰るんだろうね」と、妻が言う。
「なんで?帰らないよ。一緒に暮らした思い出がある家にずっといるさ」と、僕が言う。
妻はそれっきり何も言わなくなった。
一人でいろいろ先のことを考えているみたいだった。
僕の目には、妻は自ら複雑に考え、生きにくい生き方を選んでいるように見える。
いつも何かに追われていて、常に先のことを知りたがる。
見えない未来が不安なようだった。
大きな窓から緑が見える家に住みたい。
妻の願いを叶えてあげたい。理想とする家を建ててあげたい。
そして、もっと生きやすくしてあげられたら…。
僕は妻を幸せにすると決めたんだ。妻が笑っていられるように、僕にできることを頑張ろう。
妻は、笑った顔がとびきり可愛いのだ。